3.財閥御曹司の熱情

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 急に決まった同居生活ではあったが、これまで何ひとつ不自由なく暮らしている。  専属のハウスキーパーが細々とした家事全般を担っているため、衣都自身があくせく動くこともない。  毎日部屋を掃除してもらい、ベッドには洗い立てのシーツをかけてもらう。  清潔なシーツの香りを嗅ぐと、響とひとつになった夜を思い出さずにはいられない。  響の腕の中で、愛される喜びを貪ったあの日から――衣都の日常は百八十度、変わってしまった。 「おはよう、衣都」 「おはようございます、響さん」  パジャマのままリビングに行き、既に起床していた響と朝の挨拶を交わす。  響は朝食を食べ終わり、シンクに食器を下げたところだった。  最初は新鮮だった黒の上下のリカバリーウェア姿も、もう見慣れてしまった。  衣都は冷蔵庫から朝食がのせられたトレーを取り出し、ダイニングチェアに腰掛けた。  朝食は家政婦が昨晩のうちに作り置きしてくれたものを、テーブルの上に置くだけだ。 「コーヒー飲むよね?」  そう言ってコーヒーカップを食器棚から取り出そうとする響を見て、慌てて立ち上がる。 「自分でやります!」 「自分の分を淹れるついでだよ。衣都は座っていて」  響は慣れた手つきで豆を挽き、ドリッパーにフィルターをセットした。
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