3.財閥御曹司の熱情

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「君に服をプレゼントする楽しみを僕から奪わないでくれよ?」  遠慮する気配を察したのか、響が先回りして退路を塞ぐ。  そこまで言われたら、着ないわけにはいかないだろう。  衣都は響が選んでくれた一着を抱え、試着室に入っていった。 「どうですか……?」  着替えを終え試着室から出た衣都はおずおずと尋ねる。  響のお眼鏡に適ったのはラベンダーカラーのレースワンピースだった。  ふわりと揺れるシアーと、幾重にも重ねられたレースの甘い雰囲気が衣都の華奢な身体つきにも合っている。 「綺麗だよ、衣都。本当に……」  響は衣都を手放しで褒め称え、右手を取り手の甲にキスを贈った。  歯の浮くような甘いセリフと、気品のある紳士然とした仕草に頬が熱くなっていく。  響にとっては社交辞令でも、衣都には盆と正月が一緒に来たような特別感がある。  響はレースワンピースの購入を即決し、アクセサリーや靴といった小物まで一式揃えてくれた。  もちろん、代金はすべて響が支払った。
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