3.財閥御曹司の熱情

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 夜景の見える個室でコース料理をたっぷり堪能した後は、二人で船内を散策することにした。  せっかくクルーズ船に乗ったのなら探検だってしてみたい。  響に案内してもらい、お土産屋さんをのぞいたり、トレードマークだという細工の見事な螺旋階段の前で写真を撮ってもらった。 「実は衣都に見せたいものがあるんだ」  響はそう言うと、すっかり船内を満喫していた衣都を二階のレストランへと誘った。  クロスが敷かれた丸テーブルがいくつも並び、大勢の人がディナーを楽しんでいる中、響はレストランの最奥へと進んでいく。  入口から見た時にはわからなかったけれど、あれは……。 「グランドピアノ……?」 「外洋に出ないクルーズ船でグランドピアノがあるのは珍しいだろう?」  レストランの奥には、木目が美しいチョコレート色のグランドピアノが鎮座していた。  船の上では滅多にお目にかかれない立派なピアノで本当に驚いてしまう。 (どんな音色がするのかしら?揺れる船内で演奏するなら、慣れていないと出来ない?)  ピアノを目の前にすると、ついそわそわしてしまう。  そんな衣都の反応を見た響が支配人を呼び、何やら交渉をしてくれた。
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