3.財閥御曹司の熱情

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「ありがとう、響さん」  衣都がはにかみながらお礼を言ったその直後、ブランケットごと背後からぎゅうっと抱きすくめられる。  密着した体勢に動悸が激しくなっていく。 「ひ、びき……さん……?」 「やっと……いつもみたいに笑ってくれたね」  自分の言動に身に覚えがあり過ぎて、ギクンと心臓が飛び出そうになった。 「わ、私……そんなに笑ってませんでした?」  なるべくいつも通りを心がけていたつもりだったが、初恋の相手と結婚前提の同居生活をしておいて、緊張するなと言う方が難しい。  ましてや、衣都はまだ結婚について何の結論も出していないというのに……。   「やり方を間違えたのかと思った。律には『感性がずれてる』って怒られたよ。でも、僕には衣都の喜ばせ方がよく分からなくて……。あとはもう『あれ』に頼るしかないのかなって……」 「チョコレートですか?」 「馬鹿のひとつ覚えだろう?」  響は自虐的に笑うと、腰に回した腕により一層力を込めた。 「ずっと――こうやって衣都を抱きしめてみたかったんだ」  鼓膜を震わせる甘い囁きに、衣都は耳をそばだてた。  響と触れ合っている箇所が燃えるように熱い。 「君を愛している――。僕が傍にいて欲しいと望むのは衣都だけだ」  今し方耳に入ってきた言葉が信じられなくて、衣都はゆっくりと後ろを振り返った。  響は苦しそうに顔を曇らせながら衣都に訴えた。
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