3.財閥御曹司の熱情

19/22
前へ
/117ページ
次へ
(なんだかすごく幸せな気持ち……)  風呂上がりのようにポカポカと身体が温かい。幸せすぎて、すっかり頭がのぼせている。 (まさか、あんな風に想ってくれていたなんて……)  響から愛を告白された衣都はひたすら感激に浸っていた。  ――嬉しいに決まっている。  結婚するとか、しないとか。そういう話はさておき、ずっと片想いだと思っていたのだから。  クルーズ船が客船ターミナルに戻り、下船してからというもの、衣都の心はずっとこの調子でふわふわしていた。  それは、響も同じようで、フロントガラス越しに目が合うと照れくさそうに微笑み返してくれる。  今まで見たことのない響の照れ顔に、胸の奥がくすぐったくなる。 「衣都」  車がレジデンスに到着すると、響は助手席のドアを開け、衣都の手を取りエスコートしてくれた。  付き合いたての恋人のように手を繋ぎ、部屋まで歩いて行く。  しかし、衣都はそれだけでは満足できず、大胆にも響の腕にぎゅうっとしがみついた。 (ずっとくっついていたい……!)  どうしようもなく浮かれていると自覚している。  世の恋人達は皆こんな気持ちを隠し、澄ました顔で街を歩いているのだと思うと、尊敬の気持ちしか湧かない。
/117ページ

最初のコメントを投稿しよう!

492人が本棚に入れています
本棚に追加