4.蜜月の果てに

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  「続きはベッドでしようか?衣都の可愛い声がもっと聞きたい」  甘い言葉に誘われるように、衣都は逞しい胸板に顔を埋めながら「はい」と返事をした。  即座に抱き上げられ、お姫様抱っこでベッドまで運ばれる。  響はワイシャツのボタンを外しながら、衣都にのしかかった。 「君は僕を誘惑するのが本当に上手だね」 「そ、そんなこと……」  最後まで言い終わらないうちに唇をキスで塞がれ、流れるように服を脱がされていく。  衣都自身、響の情欲を掻き立てるスイッチがどこにあるのかちっともわからない。  唯一、確信を持って言えるのは、響はいつも財閥御曹司としての体裁をかなぐり捨てて、衣都を求めてくれるということ。  ディナークルーズから帰った夜を境に、響のベッドで一緒に寝るようになった。  もちろん、ただ一緒に寝るだけではない。  響は積年の想いを晴らすように、衣都を激しく求めた。  お互い初めて同士のはずだったのに、響はいともたやすく衣都の弱点を探り当てた。  毎夜の行為は回数を重ねるほどに快感が深まり、衣都をドロドロに蕩けさせた。 「衣都、なんて綺麗なんだ……」  気だるげに前髪を掻き上げ、乱れた息を吐き出しながら衣都を穿つ。  普段は一分の隙もない響の余裕がなくなるこの瞬間が、衣都はたまらなく好きだった。  今宵もまた、楽器のように啼かされる夜がやってくる。
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