4.蜜月の果てに

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「あの、おじ様。おば様は今日はどちらに?」 「綾子はあの日以来、私室に閉じこもっているよ。響のお嫁さんは自分が見つけるんだと、随分と張り切っていたから、その反動が大きかったようだ。梅見の会にも出ないと言い張っている。子供のみたいに拗ねているんだよ。困ったものだね」  綾子の様子を聞いた衣都の顔色が、瞬時に変わる。  いつも明るくはつらつとしている綾子が、私室に閉じこもっているなんてただ事ではない。 「おば様のお部屋までご挨拶に伺っても?」 「ああ、構わないよ」  秋雪から許可をもらった衣都は応接室から退室し、屋敷の南側に向かった。  イングリッシュガーデンがよく見える、太陽の光が燦燦と当たる一角が綾子のプライベートルームだった。 「おば様、衣都です」  扉をノックしてみたが、一向に返事がない。  いつまでも沈黙が続くばかりで、本当に部屋の中にいるのかと疑いたくなる。  それだけ、衣都と響のことがショックだったのだろうか。   「おば様の気持ちを踏みにじるようなことをして本当にごめんなさい。でも、これだけは言わせてください。私は響さんのことがずっと好きで結婚のことも……」 『帰って!』  辛辣な拒絶の言葉が矢のように身体に突き刺さる。  綾子からこんな風に拒絶されるのは初めてのことで、衣都は少なくないダメージを負った。 「また来ますね」
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