4.蜜月の果てに

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 衣都はすっかり気落ちしてしまい、ぼんやりしながら長い廊下を歩いた。 (自分のことばかりで、おば様の気持ちを考えていなかったわ)  綾子への配慮が足りなかった自分の至らなさが情けない。  心のどこかに、綾子ならば認めてくれるだろうという甘い考えがあったのは否定できない。 「どうだった?」  響は応接室の扉の前で、衣都が戻ってくるのを待っていてくれた。  衣都が首を横に振ると、響は呆れたように言い捨てた。 「まったく……。本当に大人げないな、母さんは」 「でも、悪いのは私達だわ……」  良かれと思ってセッティングした縁談を、自分勝手な振る舞いで台無しにしたのは他ならぬ衣都と響だ。  綾子を責めるのは筋違いだ。 「放っておけばいいよ。父さんが認めた以上、母さんが何をしようがこの結婚が覆ることはない」  響は実の息子とは思えないほど冷たい口調で、綾子を突き放した。  響にとって、他人からの承認はさして重要ではない。  誰が怒ろうが喚こうが、自分が決めたことを貫き通すだけの気骨があるからだ。  しかし、衣都は違う。
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