4.蜜月の果てに

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「ひ、響さんのことだって大事ですよ?」 「本当に?」  疑われるなんて心外だ。本当も何も、毎日響のことばかり考えている。  何かを試すような眼差しを向けられた衣都はしばし考えた。  言葉でいくらどちらも大切に思っていると伝えたところで、響は納得しないだろう。 (どうしたら機嫌が直るのかしら?)  衣都は悩んだ末に、響の機嫌を直るならと、恥を忍んで白状することにした。 「実は響さんがくださったチョコレートの空き箱と包み紙を全部保管してあるんです。響さんにもらったものだから、どうしても捨てられなくて。これが証拠になりませんか?」  段ボール三箱分の空き箱と包み紙は捨てようと思っても捨てられなかった、十年分蓄積された想いの塊だ。  律に何度捨てろと諭され、叱られたことか。 (ああ!やっぱり言わなければよかった……!)  あまりの恥ずかしさに、両手で顔を覆い隠す。  ひとつふたつならともかく、全部取っておくなんて、完全に初恋をこじらせている。  響はどう思ったのだろうか?  衣都はオドオドしながら、響を仰ぎ見た。 「あの……?響さん?」  バチリと目が合うと、響は次の瞬間、破顔した。 「嬉しいな。差し入れした甲斐がある」  そう言うと、嬉しそうに衣都の耳の裏にキスを落としていく。  なぜだかわからないけれど、機嫌はすっかり直ったようでホッとする。  直ったどころか、むしろ晴々とした表情で衣都の腰を引き寄せ、唇が近づいて……。
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