4.蜜月の果てに

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   休憩なしで三時間ほどピアノと向き合うと、今日の練習を切り上げ、帰宅の途に着く。  待ち合わせ場所へ向かう前に、着替えをするつもりだった。 「うわ、すごい」  響のレジデンスで暮らしてから、まじまじとクローゼットの中を眺めたのは初めてだった。  買い揃えてくれたと聞いていたが、衣都の想像以上だった。  ワンピース、靴、バッグ、アクセサリー。  どれもこれも一流ブランドの最新作ばかりだ。  これまで衣都は、自分のアパートから持ち込んだ洋服しか着用してこなかった。 しがないピアノ講師が派手なブランド品を普段着として身に着けるのははばかられる。保護者からの心象も悪い。  馬子にも衣装な気がするが、響と結婚すると決めたからには、こういった一級品にも慣れていかなければならない。  せっかくの機会だから思い切り着飾ろう。きっと響なら褒めてくれる。  でも……。   (どれを着たらいいのかしら?)  衣都はすっかり困ってしまった。  試しに二、三着ほど試着してみたが、どうしても鏡の前で首を傾げてしまう。  スタイリストが用意しただけあって衣都の好みではあるものの、どの服もしっくりこなかった。  他に良さそうなものはないかと、ハンガーラックにかかっている服を掻き分けていくと、あるワンピースが目に留まる。
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