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診察室に入る前、波蘭は廊下の鏡を見ながら、茶色い髪をととのえた。鏡には白衣姿の彼女が映る。本物の猫のような目に、高さがあって、印象に残りやすい鼻。目鼻立ちが大人びているため、実年齢より上に見られることが多い。容姿についてはほめられることが多いが、額から顎先までの長さが短めで、目鼻立ちとは対照的に輪郭は子どものようというアンバランスさがコンプレックスだ。
「よろしくお願いします」
波蘭は診察室に入ると、五十歳くらいの男性医師に向かって頭を下げる。室内にいるのは波蘭と彼のふたりだけ。男性医師は波蘭をひと目見て「おっ!」という顔をした。
「君のような若い美人はいいよ。ここはババアとブスばかりな職場だから」
「……」
波蘭はこの病院だけでも性悪な人間を何人も見てきている。出会い頭に不快な発言をされても、取り乱したりはしなかった。
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