16人が本棚に入れています
本棚に追加
「そこにいる大男がいちばん強そうね。ヴィニ子、手短に倒しちゃったら?」
タキがヴィニシウスに言った。偽物のタキを見た分、彼女は本物のタキで間違いないのだな、とカシミアは目の前のものを信じるのに少し時間がかかる。タキはムラケイを倒せば島を手に入れられると考えているようだ。
「いいえ。この島の人間の中だと、カシミアがいちばん強いわ」
ヴィニシウスはそれだけ言葉を返して、島のだれとも戦おうとしない。自分の強さを愛する女性が認めているという、カシミアはその事実に胸が熱くなる。
「――ヴィニ子」
試しに、タキだけが呼んでいるという愛称で呼んでみた。
「ん? なんか言った?」
ヴィニシウスは眼を飛ばす。ロマンスファンタジーの主人公のような見た目をした彼女でも、鋭い目つきをされるとおそろしい。
「あっ、いや、なんでもない……」
カシミアはこれまでどおりヴィニシウスと呼ぶことにする。
最初のコメントを投稿しよう!