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「力ずくで奪おうというのか! こちらの方が圧倒的に数は多いぞ!」
「ま、待て!」
カシミアはヴィニシウスを傷つけたくない思いで、前に出る。初めて心惹かれた女性と、敵対したくもなかった。
カシミアはヴィニシウスと目が合う。美しい女性が自分を見ているという事実に小躍りしたくなる。
「私はこの島の王子のカシミアだ」
本当は今すぐにでもヴィニシウスをデートに誘いたいくらいなのだが、毅然とした態度をよそおう。王子としてのふるまいは、幼少期から徹底的に父親をはじめとした大人たちに叩き込まれていた。
「むだな争いはしたくない。まずは話し合おう」
「……いいわ」
カシミアの案に、ヴィニシウスは棒を下ろす。
「君たち、彼女たちを城まで案内してやってくれ」
カシミアは兵士たちに命令する。
「えっ、私たち、城の中に入れるの? やったー」
ヴィニシウスは仲間とともにきゃっきゃとよろこぶ。そういう面は若い女性だな、とカシミアは思う。
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