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「そうね。だけど」  なにかを言いかけたとき、おおーん、と遠吠えが聞こえた。 「やつらの仲間か」  ローレンスは青ざめた。  エルシーもまた青ざめた。  指笛で、ほかの狼を呼び寄せることになってしまったかもしれない。 「ごめん……」  エルシーは謝った。謝ってもどうにかできるものではなかったけれど。 「私がなんとかする。この馬で、あなただけでも逃げろ」  ローレンスが言う。 「二人で逃げましょう」 「無理だ。それでは速度が出せずに追いつかれる」 「なら、行かないわ」 「だが」 「私を卑怯者にさせないで」  ローレンスは顔を苦渋にゆがめる。 「では、仲間が来る前に馬をこいつらに与えよう。その隙に逃げらる」  ローレンスが言い、エルシーは驚いて彼を見た。  彼は油断なく狼を見ている。その顔には疲労が浮かんでいた。 「ダメよ、あなたの愛馬でしょう?」 「しかし、あなたの命には代えられない」 「ダメ、後悔するわ。きっとなんとかなるわよ」  愛する存在を斬らせるなんて、そんなこと絶対にさせてはならない。エルシーはそう思った。
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