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「もう無理だ」
「大丈夫よ」
「あなたが限界だ」
ローレンスは言い、じりじりと後退して馬に寄る。狼に背を向けないようにしながら。
「許せ」
言って、馬に剣を向ける。
「いや、許さなくていい。お前の命の対価、一生、抱えていく」
ローレンスの声には覚悟があった。
エルシーはとっさに彼の前に出る。
「ダメよ!」
「どけ。生きるためだ」
「嫌!」
エルシーは馬の首にしがみついた。
狼が動く気配がして、ローレンスはそちらに殺気を向ける。
狼が止まった。が、いつでもとびかかれるようにその姿勢は低い。
あおーん!
再び、遠吠えが聞こえた。さきほどより近い。
「来たわ!」
エルシーは叫び、指笛を吹いた。
その声に喜びが含まれているようで、ローレンスはいぶかしく思った。が、彼女を振り返る余裕はない。少しでも目を離した瞬間、狼たちは襲い掛かって来るだろう。
森の中、下生えを踏んで走る足音が聞こえた。その呼吸は荒い。
一頭ではない。集団だ。
先頭を見た瞬間、エルシーはまた叫んだ。
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