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「しっかりなさい。王子殿下の前ですよ」 「はい」  小声で注意され、小声で返事をする。  最悪だ、とエルシーは唇をかんだ。  バチがあたったんだ。と思ってから、いや違う、と思う。  自業自得だ。自分がやってきたことが自分に返って来たのだ。  安易に人の縁談に口を出して、それがこんなことに。  彼の目の前で、ほかの男とのお見合いだなんて。  だけど、彼はどうしてここに。 「ウィステリア国の第一王子にしてエルウォール公爵であらせられますアルフレッド・オブ・レッドファルト=ロズフィールド様と、ご学友のローレンス・オブ・キリーリ=ホーク様でいらっしゃいます」  侍従が紹介した。  では、と茶色の髪に青い瞳のスッキリした顔の男性を見る。彼がアルフレッドなのだろう。  留学先で仲良くなったのか、とエルシーは理解した。それで特別に今回も一緒に来たのだろう。 「エルシー、殿下にごあいさつを」  王に促され、エルシーは茶色の髪の男性に向き直り、カーテシーでお辞儀をした。 「初めまして、エルシー・オブ・フォーラート=ウィンシェスタと申します」  名乗った直後、ローレンスがくすくすと笑った。アルフレッドも笑いをこらえるような顔をしている。 「そちらはランフォード卿だ」  王が言う。  どういうこと、とエルシーは動揺する。 「初めまして、殿下。私がアルフレッド・オブ・レッドファルト=ロズフィールドです」  黒髪の青年が言う。  紫の瞳はいたずらっぽくエルシーを捉え、優しく微笑している。
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