24人が本棚に入れています
本棚に追加
「え……?」
「こちらは学友のローレンス。お見間違えされるとは、少々残念です」
「初めまして、殿下。ローレンス・オブ・キリーリ=ホークと申します」
茶色の髪の青年がお辞儀をした。
「え、でも……」
「絵姿は届きませんでしたか?」
「まだ……」
「私はすでに拝見しておりましたよ、殿下」
黒髪の男性——アルフレッドが言う。
エルシーは唖然とした。
そうだった。
自分もまた絵姿を相手に贈っているのだ。
いくら盛られて描かれているとはいえ、特徴はとらえられている。だから彼は、狩りで最初に会ったときから気付いていたのだ。
エルシーは呆然としてしまい、そのあとの会話を覚えていられなかった。
気が付けば、二人で散歩でもして来い、と庭に放り出されていた。
エルシーとアルフレッドは並んで庭園を歩く。
空は晴れ渡り、澄んでいた。
庭はいつも通りに手入れが行き届き、芝生の緑が青々と茂り、花壇にはイフェイオンが美しく咲いていた。白、ピンク、黄、青の花を使って幾何学模様が描かれ、目を楽しませてくれる。
「ああ、美しいな」
アルフレッドは立ち止まり、感嘆をもらした。
最初のコメントを投稿しよう!