5/11
前へ
/42ページ
次へ
「え……?」 「こちらは学友のローレンス。お見間違えされるとは、少々残念です」 「初めまして、殿下。ローレンス・オブ・キリーリ=ホークと申します」  茶色の髪の青年がお辞儀をした。 「え、でも……」 「絵姿は届きませんでしたか?」 「まだ……」 「私はすでに拝見しておりましたよ、殿下」  黒髪の男性——アルフレッドが言う。  エルシーは唖然とした。  そうだった。  自分もまた絵姿を相手に贈っているのだ。  いくら盛られて描かれているとはいえ、特徴はとらえられている。だから彼は、狩りで最初に会ったときから気付いていたのだ。  エルシーは呆然としてしまい、そのあとの会話を覚えていられなかった。  気が付けば、二人で散歩でもして来い、と庭に放り出されていた。  エルシーとアルフレッドは並んで庭園を歩く。  空は晴れ渡り、澄んでいた。  庭はいつも通りに手入れが行き届き、芝生の緑が青々と茂り、花壇にはイフェイオンが美しく咲いていた。白、ピンク、黄、青の花を使って幾何学模様が描かれ、目を楽しませてくれる。 「ああ、美しいな」  アルフレッドは立ち止まり、感嘆をもらした。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加