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 きっと、とエルシーは思う。きっとメイベルは悪気なくあちこちで愚痴を言い、それが回り回って届いたのだろう。とはいえ、それを実の息子に聞かせる母親とは。 「彼は傷付いたことを隠そうとしましたが、私は気付きました。そして腹を立てました。なにも知らないくせに、と」  彼は悔しげに目を細めた。 「それで彼に身代わりを提案したんですよ。優しいローレンスはお見合い相手を断ることができないだろう、私が断って来てやる、と」 「あなたも優しいのね」 「実際には軽く復讐してやるつもりでしたよ。気に入られて、そのあとに振ってやろうと」  それはそれでひどい気がする。  だが、自分も見合いをぶち壊しに行っていたので、なにも言えなかった。 「彼は好きで太ったんじゃないんです。母君が、なぜか食事を過剰に取らせる人らしくてね。適量ですませようとすると怒ったり泣いたりして、それで仕方なく食べて太ったそうです」  彼の言葉に、エルシーはあっけにとられた。 「食べ過ぎて苦しくても許されず、もはや食事は苦行だったそうです。実際、私がいるときにも母君はローレンスにだけ異常に食べさせようとしていました」  エルシーは驚いた。貧しくて食べられない人や虐待で食べさせない人の話は聞いたことがあるが、無理矢理食べさせるなんて初耳だった。 「そんな母親がいるの?」 「いるんですよ。一年前、このままじゃいけない、と一念発起して留学を決めて、父親が母親を騙すようにして家を出してくれたそうです。ようやく普通の人の体型になれた、と泣いて喜んでいましたよ」 「がんばったのね」 「ですが、母君には太っている彼しか見えないらしい。絵姿はひどい姿で描かれていました」 「なんでお母さんは彼を嫌っているの?」
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