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「ひどいお方だ。私の心を奪っておいて、自分のお気持ちは話してくださらない」
「奪ったなんて、そんなの」
「まあ、良しとしましょう。私とあなたのお見合いは結婚が確約されている。こんなうれしいことはない」
アルフレッドはエルシーの手を持ち上げて口づける。
エルシーはかあっと頬を熱くした。
「おかしなこと言わないで!」
「なにもおかしなところはございませんよ」
アルフレッドはエルシーの腰を抱く。
「それとも、お嫌ですか?」
エルシーは答えに窮してうつむいた。
そうだ、と閃いて指を輪にしてくわえ、指笛をふく。
ぴー! と音が響く。
「なぜ指笛を? まさか」
アルフレッドが顔をあげると、犬たちが集団で走って来るのが見えた。。
ハーディをはじめとして大型犬が二人に飛びつく。衝撃でアルフレッドがエルシーから離れた。
「なぜ呼んだのですか!」
「……」
答えず、エルシーは犬に紛れて逃げようとする。
「逃がしませんよ」
アルフレッドはエルシーの腕をつかみ、ぐい、と引っ張った。
「ばう!」
ハーディがじゃれついてとびかかる。
「きゃ!」
「危ない!」
エルシーは倒れそうになり、アルフレッドが彼女を抱きかかえた。
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