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 狩りは王都の隣、ランフォード伯爵の領地で行われることになっていた。山の麓に森があり、たくさんの動物が棲んでいるという。  張り切っているエルシーは城から二十頭の猟犬を連れて行った。名目上、仲のいい王女がメイベルに貸し出したことになっている。  良い天気だった。  暖かな青空が広がり、森の緑は陽光をきらきらと反射する。  その森の入口に一台の馬車が到着した。エルシーが馬車を降りると、周りからざわめきが漏れた。  エルシーが男性のような乗馬服だったからだ。シャツの襟もとにクラヴァットをつけ、ウェストコートを着ている。さらに前が短く後ろが長い赤いコート。ブリーチと呼ばれるズボンは鹿革製。それにブーツを合わせている。髪は結い上げずに後ろで一つに結ばれていた。 「なんてはしたない」  どこかからつぶやきが聞こえた。  乗馬自体が上流階級のもので、貴族ならに乗る女性は少なくない。が、女性は普通、乗馬でもスカートを着用する。上衣は男性と同じような上着と帽子が許されるが、下半身はスカートでなければならない。そうして横鞍(サイドサドル)を使い、馬に横乗りに乗るのだ。横乗り用のドレスも存在している。 「ようこそ、リース伯爵令嬢」  黒髪に紫の瞳の青年がお辞儀して出迎えてくれた。 「ありがとう。ランフォード卿はご到着じゃないのかしら」 「おりますよ。私がローレンスです」  エルシーはきょとんとした。
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