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23年間生きてきて、デート経験はあれど一度も彼氏ができたことがなくそれがコンプレックスだった朱莉に初めて彼氏ができた。
名前は滝沢隆太。背が高い同い年の大手パンメーカーの会社員だった。
出会いは、マッチングアプリ。
最初は、同じ漫画が好きで盛り上がって流れでなんとなくカフェに行くことになったけど、実際会って話を聞いてみると朱莉の勤務しているスーパーに隆太が営業で来ていることが判明しすぐに意気投合した。
朱莉がレジ担当ということもあり、職場でで直接会う機会はなかったものの気になる彼が同じ職場にいると考えただけで嫌な仕事も頑張れた。
それに、彼と話す時は自分に振り向いてもらえるように恋の駆け引きをした。とにかく相手を褒めて、肯定する。
今までデートしてきたそんなに好みじゃない男子達もこれで朱莉に落ちてくれた。だから、今回も同じことをこれまでの経験から作り上げたマニュアルに沿って流れ作業のようにした。
その後、付き合うまでは順調だった。
隆太は、マッチングアプリのマニュアルでも読んでいたのか、3回目で告白された。
「友達じゃなくて、恋人としてお付き合いがしたいなと思って…」
恥ずかしそうにそう告げた彼の言葉に朱莉はすぐにOKをだした。ここまでは完璧なはずだった。
そう、この頃はこの恋の生存率が2週間とは思ってもいなかった。
朱莉を楽しませられてない。もっと良い人絶対いるから!
そんな薄っぺらい隆太の言葉で終わりを告げた恋は、朱莉を苦しめた。
もうすぐ24歳になるのに手を繋いだこともないし、キスや性行為も経験したことがない真っ白な自分を隆太に全部捧げようと思っていたのに彼は「初彼氏」の座以外は何も奪わずにいなくなってしまった。
セミの恋よりは長いけど、人間の恋としてはかなり短命だ。セミは1週間で子孫を残すけど、人間はそんなことできる訳がない。
隆太は、日本では有名な国立大学を卒業していたし顔もそこそこカッコよくて身長も高かった。だから、三流大学出身の顔も身長も平均的な朱莉が番外できる最後のチャンスだと思っていた。
自分が可愛くなれなくても、彼の遺伝子を引き継いだ子どもはさぞかし可愛かったはずだ。
それに、スーパーの仕事を辞めて専業主婦になりたかった朱莉にとって隆太は王子様だった。大嫌いな仕事を辞める理由が欲しかった。
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