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うんこ
二人の少女が街角で話していた。
「ねえ。あんたーーうんこって、どう思う?」
「え。なによ突然」
「うんこ、どう思うのよ」
「うんこ……茶色くて、臭いわね」
「そう。臭いのよ。うんこ、好き?」
「あんまり好きじゃないわね。あたしは。あんたは?」
「不潔だからね。はっきりいって。私も好きじゃないわ」
息せききって一人の少女が駆けつけた。
「ごめーん。日サロ行ってたら、遅くなっちゃって」
二人の少女が銘々口にした。
「遅いよ、雲子」
「雲子。日サロ行って肌焼くぐらいなら、風呂入んな。いい年こいて、汚ギャルはもう卒業だよ」
遅れた少女は、いたずらな笑みを浮かべながら言った。
「もーう。少し遅くなっただけで、文句つけないでよ。私たち、仲良し三人組でしょ」
遅れてきた少女は二人の顔をのぞき込んだ。顔色をうかがいながら、機嫌をとる。
「ねえー、そうでしょ。珍子、万子」
続・うんこ
「さ、それじゃあ行こうか」
珍子が言った。
「そうね。遅れちゃう遅れちゃう」
万子はそう応え、三人は歩き出した。
珍子が歩きながら口にする。
「それにしてもねえ。あたしと万子は変な名前だけど、それにしても人間の生殖器だもん。それにひきかえ、雲子は排泄物の名称。下品よねえ」
「下品下品」
万子は声を立てて笑った。
「あらひどい」雲子は口をとがらせる。「人間はねえ、出すもの出さないと死んじゃうんだよ。臭いからって、汚いからって差別しないでほしいな。悲しくなっちゃうじゃない」
「でも」
イヒヒと珍子は笑う。
「そうよねえ、ククク」
万子も同調し、忍び笑い。
雲子はきばった。
「私、自分の名前に誇り持っているんだから。私妹いるけど、妹だってとってもいい名前なのよ」
向こうに手を振っている少女がいる。少女は親しげに笑みながらこちらに近づいてきた。
「お姉ちゃーん」
「あら。ちょうどよかった。偶然」
珍子と万子は、
「誰?」
といった様子で顔を見合わせる。
雲子は明るく笑顔で紹介する。
「とってもかわいい私の妹。名前はーー」
妹は話を引き取った。
「花の中学二年生、尾氏津子でーす」
(作者傍白 く、苦しい……)
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