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ガラスのような馬
炎龍というのは、黄金色の大きな炎でつくられた体をしていて、幾万年の時を生きている不老の存在。
その正体は三つ目の美しい女神と言われる。
「ねえ、ねえ、ユーガ」
当然、なんとかしてくれるものと思ってた。
でも、リーナは、ユーガが足や体をガクガク震わせてるのに気がついてしまった。
「俺、どうにもできない。うわあー」
枯れた老木がこちらに倒れてきた拍子に、ユーガはリーナの手を振り解いて、猛烈な速さで逃げていった。
リーナは枯れ木をすんでのところでよける。心臓がバクバクしてるけれど、この状況をなんとかしなければ。
「どこかに水さえあれば!」
オオカミなんてどうでもいい。逃げたユーガはもっとどうでもいい。リーナは周辺に水がないか、必死に探す。
炎が周りの森に引火でもしたら、山火事になる。リーナは小さな時から、祖母のルカに山火事の恐ろしさを聞かされていた。
「この村のそばで、五十年前にあったの。勇敢な誰かが守ってくれた……」
ルカはそう言って、暖炉のそばでうたた寝をしていた。誰か、というのが誰なのか、リーナは祖母の話が曖昧で知らないのだけれど、ともかく、山火事にだけは気をつけるように、と、話を聞いた小さな頃から、心に留めて生きてきた。
「だめ。泉なんてない!」
今歩いてきた地形を頭の中で思い描く。村に戻らなければ、泉どころか井戸さえないのだ。
火はすでに、周辺の木々、三本を燃やし始めた。風がとても熱い。気を確かに保たなければ。
その時、一陣の涼しい風がリーナの前に吹いた。
ガラスのような馬だった。暗闇の中でもその輝きは不思議と見えた。その馬を乗りこなしてるのはすごく見慣れた人。
馬は透明だけど、その動きは村一番の駿馬よりもずっと猛々しく、それでいてとても美しい。
栗色の髪の優しいお兄さんだと思っていた。
ガラスのような馬を巧みに操っていたジンは、怖い眼差しで炎を睨んでいる。そして、低い声で炎と「対話」し始めた。
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