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会社に向かって歩き出すと『元カレっすか。』とあっさり言われた。 『ああ、うん、そうだね…』 返事をしてからハッとした。 しまった、息苦しさから解放されてぼっーとしていた私もあっさりと認めてしまった。 …あんな雰囲気じゃ察しもするか。 『古園くんとすれ違いでアメリカの工場に行ったから知らない人だよね。 あの、このことはー…。』 『別に誰にも言いませんけど。』 『そうだよね。そういう人だって知ってた。ありがとう。』 いつか遭遇すると構えていた再会は、古園くんがいてくれたおかげで何とか自分が保てた。 追いつかれたくないな…と思い振り向いたが隼人と梅澤専務はいなかった。 社長室のある第1ビルに行ったのだろう。 元カレと認めてしまったついでに、胸に溜まった鬱積を口の堅そうな古園くんにぶちまけたくなった。 学生の頃からの友達には話していたけれど、本当は会社の雰囲気がわかる人に聞いて欲しかったんだと思う。 『ついでと言っちゃなんだけど、胸の中の鬱積をぶちまけてもよいかしら?』 古園くんは珍しくプッと笑って『どうぞお好きなように。』と言った。 笑ってくれたことで気が楽になった。 『入社した時に配属された生産管理部の先輩だったの…』
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