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妖精を見つける「目」。子どもは誰もがその才能を持っている。
それはどんな武器でも手にできる可能性を秘めている。けれど才能だけでは未来は拓かれない。
例えばアーサー王はエクスカリバーという魔法の剣を岩から引き抜けた。それは血筋のせいだけじゃない。剣がそこにあることを知らずにいたならば、奇跡への道の入口にさえ立てなかったはずだから。
目を伏せて、そこにあったかもしれないチャンスを知らずに終わる。そうやってみすみすふいにする者もいる。
パウルは自分の孫にそうなって欲しくはなかったのだが。
妖精を見ることができなかったサラは、もう一度と探すこともなく、何かに興味や好奇心をそそられるきっかけもつかめず、自信も経験も長所も作れないまま、毎日を漫然と過ごしていく。
このとき。妖精を見ることができたなら。見ようとするほんの一瞬の心持ちがあったなら。
その後の何もかもが変わっていっただろうことを、このときのサラはまだ知らない。
(完)
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