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何にも興味も関心もない少女時代だった。学校へ行くのもめんどくさい。でも怒られるからこなすだけ。
大人しいサラは、スクールバスでからかわれるのも先生に当てられるのも嫌、知らないことにトライするのも嫌い。いつも下を向いて嵐の過ぎるのを待った。
余計なことに手を出して怪我したり恥を掻いたり揉め事になったり。同級生や親同士やご近所で、そんな話はいくらでも転がっていた。
だからサラは何もしない。それでいて口癖は「毎日がつまらない」だった。
「誰でも妖精を見ることができる。どこかに必ずいる。見つけようとすれば応えてくれる」
サラが小さな頃から祖父のパウルが言っていた。が、そんなおとぎ話を信じるほどサラはおめでたくなかった。
何もしたがらないサラを、パウルはよくボードゲームに誘った。が、容赦のないパウルにサラは簡単に負ける。そんな勝負、やりたいわけじゃないのに。残るのは悔しさだけだ。
「サラ、顔を上げてごらん――」
その日、パウルが言い終える前に、真っ黒に埋まった盤をひっくり返した。こんなゲーム、何も面白くない。
裏返しになった盤と八方に飛び散った駒。そのまま片付けもせず、サラは庭の隅で猫を突っついていた。
「何か見えるはずだよ、サラ」
パウルがまたそう声をかけた。が、サラにはどうでもいいことだった。頭から頭巾をかぶり、目を閉じ耳も塞ぐ。
「……いるのになあ」
パウルは残念そうに息をついた。
その視線の先には、薄紫のキツネノテブクロが生えていた。朝露と共にスルリと葉を滑っていく妖精がいた。下を向いたまま顔を上げようとしないサラに、それは見つけられるはずもなかった。
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