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ロルフとサラは結婚した。
が、いきなり躓いた。ロルフが怪我をし、もう操縦士を続けられなくなってしまったのだ。
「僕はもう終わりだ」
悲嘆にくれ、やけ酒をあおるロルフに、サラは平然と笑った。
「そうかしら。世の中には操縦士以外にも面白そうなことがたくさんあるわよ」
「……たとえば?」
「そうねえ。乗馬。家具の修理。きれいな髪飾りを作ること。庭を素敵に整えること。そこに植えるお花を美しく咲かせること」
縁あって出会って手を出したそれらに、サラは愛情を持ち続けている。
「じゃあ……僕にもやってみたいことがある。絵の具を買ってもいいかい?」
やがてそう言い出したロルフに、サラは即うなずいた。
「もちろんよ。このお花が売れたらね」
サラの咲かせる花はよく売れる。ロルフはすぐに思い通りの絵の具と道具を手にすることが出来た。そして、サラとサラの作る小さなガーデンを写生するようになった。
「君はなぜそんな上手に庭を作ることができるんだい?」
「そうね……妖精さんの居場所を作りたいからかしら」
「?」
子どもの頃、目を開け顔を上げればそれが見える。そんな瞬間があると、祖父のパウルに教わった。
そしてあのときサラは確かに見た。と、思う。幻だったかも知れない。それでも信じているからこそ、サラは前に進め続けている。
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