プロローグ

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プロローグ

「わぁ…!!」 冬の夜、幼い少女は甲高い声をあげて感嘆した 空一面に広がる星の海 いくら冬とはいえ都内では見ることなど有り得ない程の瞬き 「ぱぱ!ぱぱ!  空がこんなに光ってる!」 白い吐息を吐き出しながらはしゃぐその少女の後ろに二人の影 「暗いから走ると危ないよ」 微笑ましく笑いながらその少女を追う父と呼ばれた男が荷物を担ぎながら歩いてくる その後ろを少女と同じぐらいの少年が歩いていた 「龍は興味ないか?」 「ん、すげーって思うよ」 感情を表すのが得意でないのだろう、龍と呼ばれた少年は少女と対照的に落ち着いていたがずっと空を見上げている 「お前もちゃんと歩くときは地面を見なさい  転んでしまうぞ」 「…はーい」 少女から目を離して少年を注意したら次は少女が空を見上げながらくるくると回って踊っている 「お、おいおい翠!  お前ら怪我したら父さんが母さんに怒られるんだぞ」 「だってすごいんだもん!」 「うん、すごいのが悪い」 対照的な性格の筈なのに意見がピシャリと合うのは二人が双子ゆえなのだろう 「お前らなぁ……」 「ねぇねぇぱぱ!  星ってこんなにたくさんピカピカ輝いてるのね!」 両の手を空に目一杯広げて少女は父親に笑いかける 「ああ、そうだぞぉ  でも今日はこれがメインイベントじゃない」 「メインイベント…??」 「そうだ、父さんはな  二人に見せたいものがあったんだ」 その言葉に不思議そうに首をかしげる双子 「教えたいって言うべきかな」 「格闘技のほかにも?」 そう言ってスパン!と鋭い構えをとる 幼子とは思えないぐらいだ 「そっちは父さんの趣味だからな」 「しゅみなのか!」 「学校の友達誰もやってないよ、格闘技なんかさ  それも家で教えてるとか」 「こういうのはふとした時に役に立つものなんだよ  習っておいて損はないさ」 話しながらも機材をセットしていく父親、空けた空に向けて高価そうなカメラをセットしているようだ その時、一縷の筋が空に流れる 「お」 「なにあれ!なにあれ!」 「流れ星……」 「そう、流れ星だ  でもこれで終わりじゃないぞ」 話している間にもまた空を筋が駆ける 「きれーい!」 「こんな見れるものなの、流れ星って」 「今日は特別にね  流星群だ、流れ星が沢山流れる夢のような数時間さ」
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