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day.14 さやかな
「あのひとは違う」
と、幼馴染はその泥棒を庇う言い方をする。警官の僕はこの家の警備を任されていた。一体誰のために何日も徹夜で警戒していたと思うんだ。僕は彼女の言い草にカチンとなる。
「アホ言うな。泥棒や。犯罪者やぞ」
「だってあのひと、私が階段から落ちかけたの助けてくれたもーん。いいひとだもーん」
「あのな、お前んとこの先祖代々の巻き物を盗ってったんやぞ。それないと君、次の当主になれへんのやろ。小さい頃から、当主なりたがってたやん。つまりあいつは君の夢を壊した悪者やん」
つい、ガーっと反論すると、彼女は風船みたいに頬を膨らまし上目遣いに僕を睨む。う、ちょっと可愛いな。
「それはな、きっと理由があんねん」
と、彼女が言う。
「どんな理由や」
「「目にはさやに見えねども」分かることもあんの」
結局理由はないんかい。僕は呆れかえる。
「君な〜」
「あ、そうだ。私、あのひとと結婚する。そんで、あのひとに当主になってもらお」
「はあ? 顔も名前も知らん奴を婿に取る気か。君、面食いちゃうの。あいつ、仮面とったらメッチャ不細工やったらどーすんの」
「そりゃ、顔はほとんど分からなかったけど、あのひとは絶対に二枚目ですぅ」
つーんと顔を背ける幼馴染にもはやため息しか出てこない。
「は、女心はわからん。全きさやかに見えん事ばかりや」
もう見放したという態度を見せつつ、僕は今頭を悩ませている。物置に突っ込んだ怪盗の衣装を、いつ回収するべきか。
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