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春麗らかななんて謳い文句があるけれど、麗らかという物を実感したことがない、3月の卒業シーズン、短くも長かった高校生活を終えてようやく、4月から大学生だ。
「寿樹!この後どーするよ!?」
卒業証書入ったあの黒い筒を片手に、煌太が肩を組んでくる、卒業式後…寂しさとなんというか、くすぐったい不思議な気持ち、もうここに来ることがないと言う解放感、高校三年間そういやずっとコイツと居たなぁ…進む道は違うけどこれからもコイツとは友達なのだろう。
「どーする?なんかする事あっか?」
「なーんも、町行こや」
卒業、春、告白…うーん、俺等には関係ない話しだ、薄情と言うことなかれ、てきとーに周りに挨拶だけしながら煌太と駅に向かう。
山間のクソ田舎、バカだった俺がギリギリ入れたのがこの高校だった。
公立は入れない、私立も近所で探すと偏差値が高すぎた、仕方なくまだ近くて偏差値低いアホ高校のここを選んだのは、まぁ…今になって間違いでは無かったような気がする。
電車に乗り込んで町に出る、煌太と二人だけの卒業祝い、何が悲しくて野郎二人でこんなことと思うが、まぁ、楽しいから構わない。
コンビニでてきとーなもん買って、目的も無いのに買ったもん飲み食いしながらただ歩く、それだけで楽しかったのに。
キュイキュイキュ…甲高い音が耳に入る、音の鳴った方を見ればそこには大人のゲームセンター、パチンコ店。
「なぁ、寿樹、パチンコっておもろいんかなぁ?」
「わーからん、興味はあるけどなぁ」
「卒業したし、行ってみね?入るだけ」
「おぉ、良いかもな!けど、制服は不味いやん」
「んじゃ、一回帰ろーや!」
ほんのちょっとした興味だった、この先あんなにパチンコに熱くなるなんて思っても見なかった、こんな熱い大学4年間になるなんて、誰が想像したのだろうか?
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