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「悪く思うなよ、お嬢さま」  寝台ですらない、おざなりに布を敷いただけの粗末な床に押し倒された。けれどソフィアは悲鳴を上げもせず、ただ静かに四肢の力を抜く。 「いい子だ。大人しくしていたら、ちゃんとよくしてやる」  下卑た笑いを向けられているはずなのに、うろたえることはなかった。むしろ当然と言わんばかりに、穏やかに微笑んでみせる。 「もちろんです。だって私は、初めてお会いした日からずっとあなたのものだったのですから」 「ずいぶんなことを言ってくれる。上等だ。泣いても途中で止めてやることはできんからな」  荒々しく首筋に噛みつかれたが、彼女の微笑みが消えることはない。押し倒している男の手のほうが、いつの間にか小刻みに震えていた。
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