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「大変ですねっ。
口紅のシミ、とれづらいからっ。
業者に出した方がいいんじゃないですかっ?
あっ、なんでしたら、私がとりましょうかっ?」
……村上さんって、クリーニング業者なのかな、と綾都は思う。
今、業者に出さないととれない的なことを言っていたはずだが。
慶紀は騒ぐ浜子ではなく、侑矢の方を見ていた。
身長的に目線が同じだからかもしれないが。
一方、浜子は侑矢の方をまったく見ない。
村上さん、いつもなら侑矢といると、何処からともなくやってきて、私を無視して侑矢と話し出すのになあ、
と綾都が不思議に思いながら、見ていると、浜子はいきなり、綾都を振り向き言った。
「もうっ。
藤宮さん、ダメじゃないの、お客様に。
ほんとうに注意散漫なんだからっ」
まあ、そこは今、否定できないな……。
浜子は上目遣いに窺うように慶紀を見て、
「口紅のあととか、彼女さんが見たら、怒りますよね?」
と訊く。
「彼女……はいないな」
そう慶紀が言うと、浜子は目を輝かせた。
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