アルトワ伯爵からの招待状

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「あの、とても光栄です。ミス・ヴァロワのようなお美しい、洗練されたレディからそのようなお言葉をいただけるなんて、その、もったいないです」 「ふふふ。そんなことはありません。あなたも可愛らしいです、ミス・カンブルラン。あなたは音楽は演奏なさいますか?」 「あ、えっと、ピアノを少ししておりました。ですが最近はほとんど弾きません。読書ばかりをしてしまって、人前で演奏するほどは上達できませんでした。あの、ミス・ヴァロワは何かなさいますか?」 「私は色々なものを弾きますが、手を出しすぎてしまって、どれか一つを極めるようなことはできません。ミス・カンブルラン、読書はどのようなものを読みなさるの?」 「えっと……」  それから15分ほど会話は続き、舞踏会での再会を約束してエマは帰っていった。  ルイ王太子殿下、皆がアルトワ伯爵と呼んで親しんでいる人気のある次期国王は、派手好きの(もてな)し好きとして有名で、舞踏会を頻繁に開いては毎夜のようにどんちゃん騒ぎをしているらしい。そろそろ身を固めなければならない年齢になってきているため、未来の王妃候補を探し始めるのではともっぱらの噂になっている。
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