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サンドリーヌは、結婚などまだ遠い未来の出来事としか捉えておらず、未来の王妃探しなど全く興味はなかったが、先日初めて行った舞踏会が想像以上の素晴らしさだったため、再び舞踏会へ行けると思うとそれだけで気分が高揚していた。
加えてミス・ヴァロワがわざわざ自分を訪問し、招待状を手渡してくれたことも嬉しかった。
エマが以前からの友人のような気持ちでいると言ってくれていたように、サンドリーヌもエマと初めて会った気がしなかった。
遠い世界の自分、早苗である自分のかすかな記憶から、顔は知らないながらもEMAという人物と誰よりも親しくしていたような覚えがあった。
エマと他愛もない会話をしていたときも、初めてのことではなく日常的にしていたような気がしてならなかった。共に泣き笑い叱咤激励し、互いに友情を高め合ったEMAと、初対面ながらも親しみを覚えたエマとを重ねて見てしまうサンドリーヌがいた。
ミス・ヴァロワがそのEMAであったなら、そんなことはあり得ることではないとわかってはいても、そうであると願わずにはいられなかった。
舞踏会とエマのことを考えて顔をほころばせていたサンドリーヌは、醜態をさらしてしまった紳士のことなどすっかり忘れてしまっていたのだった。
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