王太子の開いた舞踏会

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「ベルタン侯爵! 驚きました」  サンドリーヌはアランの隣に腰を掛けながら声を上げた。 「午後はベルタン侯爵と一緒だったんだ。大臣連中との会合が思った以上にかかってしまったから、侯爵にお願いをしてそのまま同行してもらうことにしたんだ。すまないね」  カンブルラン子爵が説明した。 「いえいえ。ミス・カンブルランの見目麗(みめうるわ)しいお姿を一早く拝見させていただまして光栄の至りです」  眩しいほどの笑顔を見せてアランはそう言った。 「ありがとうございます。ベルタン侯爵もお美しいですわ」  サンドリーヌの返答にアランは笑い声をあげた。 「到着いたしました」  従僕がそう言って馬車を停めた。サンドリーヌはカンブルラン子爵の手に引かれて馬車を降りた。 「すごい……」  派手好きなアルトワ伯爵の舞踏会は他とはかなり趣が異なっている。会場の広間だけでなく城の外にも華やかな飾り付けがなされ、曲芸の者たちの余興があちこちで披露されていたりと、城へ到着した瞬間から客人が楽しめるように趣向が凝らされている。 「お父様見て! ほら、あれ! 凄いわぁ」  サンドリーヌはそれらに大興奮の様子で、父の服の袖を引っ張って注意を促そうとしてはしゃいでいた。 「よしなさいサンドリーヌ、もう子供じゃないんだから。その言葉使いはなんだ」 「あ、ほら、あそこ! お父様、ほら!」  サンドリーヌの耳には父の言葉など入らない。
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