王太子の開いた舞踏会

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 階段に差し掛かると、一人の道化がレディ達に向けて次々と花を手渡している姿が見えてきた。  サンドリーヌがその前へ通りかかると、道化は黄色いパンジーを差し出した。 「凄い!どうやって出しているのかしら」 「手品というものですよ。異国で拝見したことがあります」  アランが横から声をかけた。  横から覗き込んでいたアランに気がついた道化は、サンドリーヌだけでなくアランにも白のマーガレットを差し出した。  アランは戸惑いを見せたが、はにかんだ笑顔を見せて仰々しく花を受け取った。 「僕にまで、ありがとうございます」  そう礼を言ったアランを道化は数秒ほど見つめていた。アランが戸惑って視線を外した瞬間、道化は止まっていた時が進み始めたかように動き出し、次に来た女性の方へと再び花を差し出し始めた。  サンドリーヌは花を指でくるくると回しながら階段を上っている。 「素敵ですね。アルトワ伯爵はお噂通りお客を楽しませることがお好きな方なんですね」 「おそらくもっと色々な趣向を楽しめますよ」  アランが優しく微笑んで言った。
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