王太子の開いた舞踏会

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「殿下、ご無沙汰しております」  ダンスを終えてシャンパンに口をつけていたアルトワ伯爵に、ピエールが声をかけた。 「おぉ、ピエールではないか! お前が不在でどんなに退屈だったか。ようやく戻って来てくれたか」  アルトワ伯爵は満面の笑みで友を迎えた。 「殿下のご厚意で3年も外遊させていただきまして深く感謝致します」 「3年は長かったな。もう十分だろう。これ以上は行かせんぞ!」  そう言うとアルトワ伯爵はピエールの背中を大きく叩いた。  アルトワ伯爵とのダンスを終えて所在なく立ちすくんだままのサンドリーヌに目を留めたピエールは、手を差し出して誘いをかけた。 「ミス・カンブルラン、私とダンスを踊っていただけますか?」  噂の的であるピエールからの突然の申し出に驚いたが、サンドリーヌは差し出された手を取ってお辞儀をした。 「ピエール、終わったら部屋へ来るように!」  アルトワ伯爵が声をあげた。 「承知しました」  ピエールはアルトワ伯爵の方へ一礼して、サンドリーヌを広間の中央へ連れ出した。 「朝まで飲むからな!」  アルトワ伯爵が叫んだ。  ダンスを始めたピエールはその声には応えずに、今にも笑い出しそうな表情を浮かべてサンドリーヌを見つめていた。
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