王太子の開いた舞踏会

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「いいえ。伯爵は皆の注目の的になっていらっしゃるようですね」 「あぁ、相手を探していると思われているのでしょうか。そんなつもりはありませんし、そう思い違いさせるような行動も取っていないつもりでしたが」 「ミス・ヴァロワと親しくしていらっしゃるではありませんか」 「ミス・ヴァロワはお美しく、お話ししていても楽しいお方ですからね。ですが、独り占めをしているつもりはありません」 「独り占めしていただくと私が困ります。これからミス・ヴァロワと親しくしたいと思っておりますので」  ピエールは目の前のレディに驚きの目を向けた。こんな視点で物を言われたのは初めてのことだったからだ。 「ミス・カンブルランも社交界デビューをなされたことですし、どなたかに見初められることになるでしょう」 「なぜレディが社交界へ出ると、紳士を探すとお考えになられるのでしょう。私はまだ見初められたくはありません。社交界に出たばかりなのですから、素敵なレディたちとお喋りをしたり、ダンスをしたり、楽しみなことがたくさんあります」  ピエールは、サンドリーヌの率直な言い方にも、その内容にも意表を突かれて愉快な気持ちになった。 「そうですね。半身娘で半身レディのままでは、結婚を考えるにはまだ早いというものです」
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