王太子の開いた舞踏会

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「舞踏会は想像以上の世界でした。殿下と踊っていただけることになったと思えば、国中で慕われる伯爵様とこのように間近でお喋りまでしてしまいました。とても信じられません」  ピエールは次期宰相として名を馳せているだけでなく、帰国する前から舞踏会などの社交の場へ顔を見せることが少なく、来たとしてもダンスを踊らないことでも有名だった。  そのため、僅か数回踊っただけのエマが結婚のお相手として噂になるほど、ピエールのダンスは物珍しいことであった。  アルトワ伯爵と踊った後にシャイン伯爵ともダンスを踊るなど、国中のレディを探しても誰も得たことのない栄誉だった。  知らぬ者はいないほどの二人であるアルトワ伯爵とシャイン伯爵の顔すら知らずにいたサンドリーヌが、そのようなことに無知であるのも当然の話で、周囲から嫉妬と驚嘆の目を集めていることなど全く気がついていないのだった。
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