エマとアランの密談

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「あら、侯爵も負けないお方ね。ふふふ。私の始末に負えないところはミス・カンブルランを嫌な方だとは思えないところです。彼女と仲良くなりたいと思っておりますし、興味を惹かれておりますの。面白いお方ですから、シャイン伯爵やアルトワ伯爵もダンスにお誘いになられたのでしょうか」  エマの余裕は崩れない。愉快そうな笑みをたたえたまま、ピエールとサンドリーヌのダンスを目で追っている。 「ピエールが三度もダンスに誘われたのはあなたが初めてですよ。僅か一度きりのダンスでミス・カンブルランをお気に召したなどとはとても言えないでしょう。ピエールはカンブルラン子爵と懇意にしておりますから、そのためと考える方が自然なことのように思えます」 「えぇ。承知しております」  アランはエマの不敵な笑みを見て納得した。  僕にミス・カンブルランを惹き付けておけと忠告している。自分がピエールの心を掴む自信はあるけれど、少しでも他の可能性を取り除こうとしているようだ。  社交界では珍しくもないことだが、社交界デビューを果たして間もないレディが初対面の紳士を相手に、となると珍しいと言える。 「どちらにせよ、アルトワ伯爵がミス・カンブルランにお手をつけるのは面白くない展開になります。階級差がおありになるから、まさかご結婚のお相手にとまではお考えになられないと思いますけれど」 「ピエールはアルトワ伯爵のご友人でありますから、何か直接お聞き及びになっているかもしれません」 「ベルタン侯爵、何かお耳に挟まれましたら、私の耳にも入れてくださらない?」
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