エマとアランの密談

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 ピエールに対する自信はあるだろうに、わざわざミス・カンブルランのことを忠告しているのは何故なのかと、アランは訝しんでいたが、ようやく合点がいった。アルトワ伯爵の真意を探ることが目的だったようだ。  本当にミス・カンブルランのことを友人として案じているのだろうか、とアランは微笑ましく思えて、自分にしかわからぬ程度に笑みを浮かべた。 「承知いたしました」  アランは答えると、一礼をしてエマの側を離れた。 「あら、ベルタン侯爵、ごきげんよう」  アランは考え事をしながら歩いていたため、目の前に現れたレディに気が付かなかった。 「ミス・マーシャル。こんばんは」  あなたにお会いできて心から嬉しく思いますと言わんばかりのとろける笑顔で返答した。 「いかがなさいましたの?」  ミス・アンナ・マーシャルは気遣わしくアランを仰ぎ見た。アンナはふっくらとした体つきのレディだが、艶々とした美肌とパッチリとしたまん丸い目が、ふくよかさを愛らしく見せている。 「いえ、考え事をしておりました。お気遣いを頂いて感謝致します。ミス・マーシャル、踊っていただけますか?」  アランはアンナに手を差し出した。 「喜んで」  艶々とした丸い顔に可愛らしい笑顔を満開に咲かせたアンナはアランの手を取った。
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