城での夕食会

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城での夕食会

 サンドリーヌは再び城を訪れていた。  今夜は広間ではなく、アルトワ伯爵が主に使用しているダイニングルームへと案内をされた。  サンドリーヌは荘厳で美しい城の中を見渡しながら歩いているため足元がおぼつかない。アランがそんなサンドリーヌを時折支えながら付き添っている。  サンドリーヌとエマ、そしてアランとピエールは、オペラが終演するとアルトワ伯爵にこう声をかけられた。 「今夜のオペラは良かった。このまま解散して一人でそれについて(ふけ)ることになるなど面白くはない。ここにいる皆で共に食事でもしながらオペラについて語り合うというのはどうだろう? 皆はこの後予定はないか? 異存がなければ、さあ行こう!」  多少強引な誘い文句ではあったが、確かに今夜のオペラで興奮覚めやらぬ状態であったため、その余韻を皆で分かち合えるのなら、しかもそれが(もてな)し好きで有名なアルトワ伯爵からの誘いであれば、そんな面白い宵に付き合わぬ理由はないと思った。 「今宵は急な誘いにも関わらず、よくぞおいでくださった」  アルトワ伯爵がワイングラスを掲げて声を出した。  テーブルの上には五人分の食事の支度が整えられている。 「遠慮なく楽しんでくれたまえ」  アルトワ伯爵がそう言って使用人たちに合図を送ると、前菜が皆の前に置かれ始めた。 「アルトワ伯爵は、本日復帰したあのアンジェラ・ガルシアとは知己の仲ですとか」  エマが話題を誘う。
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