城での夕食会

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「殿下のお心遣いに深く感謝致します。今夜もご招待をいただきまして大変光栄でした。今夜のオペラは諦めておりましたので、鑑賞することができて感動もひとしおでした」  アランは笑顔を大きくしてそう言うと、軽く頭を下げた。  アランから視線を外したアルトワ伯爵が、エマとオペラについて会話をしていたサンドリーヌに話を振った。 「ミス・カンブルランもオペラがお好きですか?」 「はい、今夜初めて鑑賞致しましたけど、とても楽しめました」 「舞台演劇の方はいかがですか?」 「はい、そちらはまだ鑑賞したことがございません。小説を読むことが好きなので、そちらも興味を惹かれます」 「それでは来週始まるジャン=リュック・レネの新作舞台にご招待致しましょう。ミス・ヴァロワもいかがですか? 私と、このシャイン伯爵とでエスコートをさせていただきます」  アルトワ伯爵はサンドリーヌからエマの方へも視線を向けて笑顔を見せた。 「ありがとうございます。とても光栄です」  エマは静かな微笑を浮かべて快諾した。しかしその心中は落ち着いてなどいなかった。  エマは対面にいるピエールの方へ頻繁に視線を送っていたが、ピエールはサンドリーヌの表情を伺っているばかりで、エマの方へはほとんど意識を向けない様子だった。エマはそれが気がかかりで、態度とは裏腹に落ち着かない気持ちになっていた。
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