城での夕食会

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「ミス・カンブルラン、カンブルラン子爵は、新しい航路を開拓する予定の貿易会社に投資をなされているとか」  アルトワ伯爵は突然話題を変えた。 「あ、あの、はい、申し訳ありません。私はあまり父の仕事には詳しくないので……その、自邸に何人もの紳士の方が毎日のように訪れているようですので、何か新しいことを始めたのだとは思い至っておりましたが」  サンドリーヌは無知な自分を恥じ入って俯いた。 「カンブルラン子爵はかなり熱心に投資や貿易会社の運営について研究されていらっしゃいます。シャイン伯爵と僕もよく話し相手として子爵の招待を受けております」  アランがサンドリーヌの話題を引き継いだ。 「そうですか。国としても貿易の新規開拓は重要なことだと考えております。機会を設けてカンブルラン子爵をお招き申し上げてお話を伺いたいものです」  アルトワ伯爵は視線をサンドリーヌに据えていながらも、時折アランの表情をチラチラと伺っていた。  自分に注目が集まっていることに気がついたサンドリーヌは、顔を赤らめてますます俯いた。 「アルトワ伯爵は外国に興味がおありだが、貿易事業に関してはまだ知識が足りていない現状でしょう。カンブルラン子爵と議論をする前に、もう少し勉強なさった方がよろしいかと思います」  ピエールが牽制を入れた。
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