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アルトワ伯爵はピエールに鋭い視線を向けたが、すぐに穏やかな表情に切り替え、何気ない調子を装いながらアランに声をかけた。
「それではベルタン侯爵に一つご教授を願えないでしょうか」
アランは突然の申し出に面食らったが、すぐに返事を返した。
「光栄なことであります。アルトワ伯爵からの数々のご厚意に報える機会を頂けることは願ってもないことです」
アランの心からの笑顔を見てアルトワ伯爵は安堵し、顔のほころびを抑えられないでいた。
「感謝します。ベルタン侯爵が良ければ明日にでも、今一度こちらへ来ていただけませんか」
「承知致しました」
アルトワ伯爵はアランの笑顔を見て目を細め、視線をサンドリーヌに向けた。
「ミス・カンブルラン、カンブルラン子爵と議論をするためには勉強が必要なようですから、お伺いをするのはもうしばし先に延ばしたいと思います」
「かしこまりました」
サンドリーヌは、なぜわざわざそんなことを自分に言うのだろうと不思議に思いながらも、笑顔で答えた。
その三人のやり取りに鋭い視線を向けていたピエールと、そのピエールを熱心に見つめていたエマと、その夕食会は様々な感情が揺れ動いた宵となったのだった。
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