カンブルラン邸での昼食会

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カンブルラン邸での昼食会

「ミス・カンブルラン、本日はお招きいただきましてありがとうございます」  エマは晴れやかな黄色のモスリンのドレスを風にそよがせている。落ち着いた微笑は、そのドレスも周りに咲く花々も霞んでしまうほど美しい。 「ミス・ヴァロワがお招きしてくださった昼食会には敵いませんが、お楽しみいただけたら嬉しいです」  サンドリーヌは薄いブルーの絹のドレスだった。サンドリーヌは誰もが振り返る美人とは言えないまでも、健康的で溌剌とした表情が可愛らしく、彼女を見た者は皆好意的な印象を受ける。  日差しは強すぎず暖かで、風が吹くと涼しかった。  サンドリーヌはカンブルラン邸の裏手の庭に大きな敷物を出して、ピクニックのような装いで昼食会を催した。  エマの他にマーシャル子爵の娘アンナと、カルパンティエ男爵の娘マリーも招いていた。 「ミス・ヴァロワとお近づきになれるなんて光栄なことですわ」  アンナが嬉々として言った。 「シャイン伯爵様の未来の奥方様でしょう?」  マリーも興奮してキイキイ声ではしゃいでいる。 「ご本人を前にして噂話のようなことを。失礼よ」  アンナがマリーを制した。 「構いません。レディの昼食会といえば恋の噂話ですもの」  エマは余裕の笑みを見せて返す。 「ではお噂は事実でいらっしゃるのですか?」  マリーは引くことを知らずに前のめりになって言った。
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