カンブルラン邸での昼食会

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「そうであれば嬉しいことだと考えております」  エマは不快な表情を一切見せずに言う。 「すごいですわ! シャイン伯爵様とのお噂に対して、そのようにお答えになられるとは! 私も言ってみたいものですわ」  マリーは両手を組んで、うっとりとした表情を浮かべて言った。  マリーは不躾な娘だが、嫌味ではなく本心からの言葉だとわかる子供っぽさがあるので周りからは大目に見られている。 「アンナとマリーはレモネードでよかったかしら」  サンドリーヌは料理を並べ終わると、グラスを両手に持って皆に問いかけた。昼食会の段取りに集中していて話題は耳に入っていない様子だ。 「私もレモネードをいただきます」  エマが笑顔を向けて答えた。  サンドリーヌはエマのグラスに冷えたレモネードを注ぎいれると、友人たちの返答は待たずにグラスに注いだ。 「サンドリーヌありがとう。アルトワ伯爵の舞踏会は愉快でしたね。アンナはお気に召した紳士がいらっしゃって?」  マリーはレモネードのグラスを受け取ると話題を変えた。 「そんな、まだ舞踏会へは行き始めたばかりなんですから、お気に召した紳士の方などまだおりません」  アンナは動揺を隠そうとして早口で言った。
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