カンブルラン邸での昼食会

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「えっ、いや、たまたまよ! そう、ミス・ヴァロワのおっしゃったように順番よ。お近づきと言ってもただ一度ご一緒しただけじゃないの」  サンドリーヌは場の空気を変えようとして必死に答えた。 「その通りね。まだ子供みたいなサンドリーヌが紳士に見初められるなんて、そんなのまだ先の話だわ」 「どちらにせよシャイン伯爵様とお近づきになれたところで、ミス・ヴァロワがいらっしゃるんですもの。ミス・ヴァロワと伯爵様のお二方が並んでらっしゃる姿をご覧になれば、その間に割って入ることなど無理なことだと誰しもが諦めざるを得ませんわ」  マリーは再びうっとりとした表情を浮かべて言った。 「そうですわ。サンドリーヌがミス・ヴァロワとお近づきになられていたから、仲の良いシャイン伯爵とベルタン侯爵のお連れとして選ばれただけなのよ」  アンナは納得したという顔で言った。 「ふふふ。ミス・カンブルランのお相手はベルタン侯爵ではないと思います」  エマの突然の言葉に一同は一斉にエマに視線を集めた。 「あらあら。皆さんアルトワ伯爵の余興をご覧になられたのは初めてでしたものね。あのように一人のレディを引き立てて皆の注目を集めるような行為は、これまで一度もなかったことだそうです」
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