カンブルラン邸での昼食会

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「ミス・ヴァロワ、それはつまり」 「ルイ王太子殿下がサンドリーヌを……」  アンナとマリーは目を大きく見開いて言い淀んだ。 「私には判断致しかねますが、リヴェット公爵夫人のお言葉ではとても珍しいことのようでした」 「もしそれが本当のことでしたら、サンドリーヌ……」  アンナは青ざめた表情を浮かべていた。 「サンドリーヌにはそんな結婚をして欲しくはないわ」  マリーは不安そうな表情で言った。  自分についての話題に入れずおろおろとしていたサンドリーヌは、二人の変わりように心配になって口を開いた。 「アンナ、マリー、どうしたのよ。そんな、私がアルトワ伯爵のお気を惹くなんてこと、あるわけないでしょう」 「ミス・ヴァロワはご存知ではないのですか?」  アンナはサンドリーヌの言葉には応えず、エマの方へ言葉を向けた。 「ミス・マーシャル、何のことですか?」  エマは落ち着いたまま微笑を浮かべて答えた。 「アルトワ伯爵は、同性の紳士にしかご興味を抱かれないというお噂を」
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