結婚の申し出

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 サンドリーヌはアランに想いを寄せていると思い込んでいたピエールは、その返答に少し驚いた。  アランがサンドリーヌに対して少なくない好意の念を抱いていることはわかっていたため、アルトワ伯爵の邪魔がなければ二人の想いは遂げられるのだろうと考えていたのだ。 「それは失礼致しました。そう言えばミス・カンブルランはまだ半身娘のレディでいらっしゃいましたね」  ピエールは元気づけようとして冗談めいた言葉を選んだ。  しかし、ピエールのその意図は逆効果になってしまった。 「はい、そんな私が王太子に嫁ぐなんて、そんなことは到底無理なお話です。どうしたらいいのでしょう」  サンドリーヌの目には涙が溢れてきた。  ピエールは彼女を憐れに思った。  サンドリーヌが選ばれた理由を知っているため、そんな理由で彼女の人生が決定づけられるのだと考えると、可哀想に思えてきたのだ。  友人のアランのこともあるし、やはりこの話は白紙に戻すべきだ、とピエールは一人決意を固めた。
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